第4の色

[mixi 2006-09-17 メモは自分のコメントから]

色の3原色というのは眼の中の色を感じる受容体の色素の種類に3種類あるからであるが,そのうち赤の色素には生まれつき2種類のバリエーションがあって,わずかに違う波長の範囲をみているのだそうだ.

これだけだと「あなたの見ている赤は私の赤とは違うかも..」というような話になるが,もうひとつ,これを決める遺伝子がX染色体上にあるので,女性の場合はいわゆるモザイクが可能で,それぞれの遺伝子を1個づつ持っていると,網膜上の場所によってその一方だけが活性化する.すると,その女性は4原色で世界をみることになる(かもしれない).

ここまでは,どこまできちんと確認されているかどうかはわからないが,話としてはかなり有名なようで,ウェブで調べてもいくつか記事が出てくる.

私が,あれれ,と思ったのは,この話を聞いた自分が,まず「コンピュータのモニタにいろいろな色を表示させて実験してみたら面白いだろう」と考えたときである.

実際は,モニタを使った実験は,無意味か,少なくともかなり間接的なものになるだろう.なぜかというと,モニタにほとんどあらゆる色が表示できるということが,すでに人間が3原色でものをみているということを前提としているからである.テレビも印刷も,私達の身の回りにあるほぼすべての色彩を扱う技術がそうである.

直接的に個人差をみる実験をしようと思ったら,各波長の光を望む割合で混合したものを出せるような特殊な装置が必要だろう.もし紙に色を塗ったものでテストしようとしたら,3原色のひとには同じ色にみえる複数の紙を含んだ沢山のいろがみが必要になる.

考えてみれば当たり前の話であるが,私は,最初それがわからなかった自分自身に,ちょっと驚いてしまった.

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メモ:

検索していちばん上に出てきたのは
http://www.ne.jp/asahi/mc/minatomachi/color-sense.htm

野尻氏の掲示板「野尻ボード」に関連した記事があり,以下の総合報告が引用されていました.誰か読んだら教えて.

Jameson et al. 2001 Psychon Bull Rev.8:244-61.
Richer color experience in observers with multiple photopigment opsin genes.

同じ掲示板に,処理する神経回路網が3色用なら,ヘテロの女性でも4原色にならないのでは,という議論があることが紹介されていました.

いずれにしても,上のおもな趣旨は4原色説の紹介そのものというより「その話の意味を理解できないほど3原色になれている私」への驚きのほうです.